自己免疫疾患の炎症性臓器病変の発症機序、例えば慢性関節リウマチにおける関節滑膜炎症の発症には病変局所におけるT細胞や炎症性細胞の血管外への遊走が重要な役割を果たしている。前年度までの研究で、血管外遊走性T細胞は、末梢血T細胞の1〜5%を占めるCD4十CD45RO+ヘルパーT細胞で、活性化関連抗原を強く発現した特定のT細胞亜群が選択的に遊走することを示した。 今年度は、慢性関節リウマチ患者末梢血中の血管外遊走性T細胞をコラーゲンゲル上に血管内皮細胞を単層培養したin vitro血管モデルを用いた実験系で測定した。 炎症局所の血管内皮細胞のモデルとして、予めIFN-γ、IL-1で刺激した血管内皮細胞を用いてT細胞遊走を調べると、未処理の血管内皮細胞と比し、それぞれ2.74倍、1.77倍にT細胞血管外遊走が増加した。 活動期リウマチ患者末梢血の血管外遊走性T細胞は、対照とした正常人または変形性関節症患者と比較して減少していた。臨床的リウマチ活動性で患者を層別すると、活動性の高いリウマチ患者で血管外遊走性T細胞の減少が顕著であった。 臨床経過を追って測定した患者では、治療により活動性が低下するにつれて正常域に戻った。また、金剤が著効を示したリウマチ患者では血管外遊走性T細胞は著減した。 以上の成績から、活動期リウマチ患者では関節滑膜炎症部位で血管外遊続性T細胞が捕捉されて循環血液中では減少し、また金剤著効例ではT細胞活性化と血管外遊走性T細胞の産生が抑制されたと考えられた。
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