研究概要 |
平成3年度は、当初の計画に基きIgA腎症患者とその家族におけるIgA産生亢進に及ぼすインタ-ロイチン4,5および6とTGFーβの相互作用を測定した。対象は腎生検によって診断された末治療のIgA腎症患者15例とその家族31名で、対照としてIgA沈着を伴わない慢性増殖性糸球体腎炎患者10例と健常成人10名を同時に測定した。方法は末梢血よりわれわれの既報による方法でIgA特異的スイッチT細胞であるT_<α4>細胞を取り出し、これをB細胞と培養して上記の各種インタ-ロイキンを添加し、上清中に産生されるIgAはレ-ザ-・ネフェロメトリ-で、培養系中に増加するIgAーbearingリンパ球は3カラ-・フロ-サイトメトリ-で測定した。有意差の検定にはMannーWhitneyのUtestを使用した。その結果、インタ-ロイキン4,5および6とTGFーβの単独添加群ではILー4添加群においてIgA産生が最も亢進し、これらのサイトカインを相互に組み合せた系においてはILー4とILー6の組み合せが最も強くIgA産生能を亢進させた。ILー5およびTGFーβにはIgA産生亢進効果が認めらなかった。以上の成績から、ヒトにおいてはマウスでの知見とは異ってILー54TGFーβにはIgA特異的産生亢進作用が認められず、ILー4単独あるいはILー4とILー6の組み合せがIgA産生を亢進させることが示された。すなわち現時点においては、IgA腎症の患者およびその家族においてIgAの差産亢進をもたらしているサイトカインはILー4またはILー4とILー6の組み合わせであることが強く示唆された。
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