研究課題
平成4年度は当初からの研究計画ならびにそれ以前の2年間の研究成果に基いて、ヒトにおけるIgA特異的産生亢進サイトカインの同定を試みる。すなわち従来から検討を行って来たIL-5、IL-6、TGF-βに加えてIL-4とリンパ球の相互作用を上記各種のサイトカインの添加および非添加条件下で検討した。対象はIgA腎症患者16名とその家族39名および健〓成人16名であった。分離精製したヒト末〓血リンパ球およびそこから濃縮したB細胞とTα4細胞(IgA特異的スイッチT細胞)に種々の濃度の上記サイトカインを相互に組み合せたものを添加して培養し、7日間の培養後にIgAを細胞表面に出現させたB細胞をクローサイトメトリーで測定し、培養上情中のIgG,IgA、IgM(一部の症例ではIgEも)をELISAにて測定した。その結果ヒトにおいてはIL-4がIgEと共にIgAも特異的に産生亢進させることが示された。このIL-4の効果はIL-6との協同添加によってさらに増強されたが、LL-5およびTGF-βにはそのような協同増強作用は認められなかった。以上の成績からヒトにおいてはIL-4がIgA特異的産生亢進作用を有するサイトカインであって、従来マウスにおいて報告されて来たIL-5とTG-βにはそのような作用が認められないことが明らかになり、今後ヒトにおけるIgA腎症の研究にはIL-4とIL-6の関与をさらに追求する必要があることが示された。以上の成果は平成4年の第5回国際IgA腎症シンポジウムと第5回アジア太平洋腎臓会議において報告され、それぞれの会議のProceedingsにて印刷中である。
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