研究概要 |
平成2年度から平成4年度にわたる研究は、当初の研究計画通り順調に行われた。平成2年度においてはIgA腎症患者とその家族におけるインターロイキン5(IL-5)とインターロイキン6(IL-6)の相互作用を測定した。その結果IL-5とIL-6は単独および併用のいずれの場合もリンパ球培養上清中の各種免疫グロブリンの濃度を有意に上昇させたがIgAに特異的な増加は認められず、従ってこの2つのインターロイキンはいずれもヒトにおいてはIgA特異的産生亢進作用を有しないことが示される。平成3年度は同じく患者とその家族に対してIL-5,IL-6にTGF-βを加えてそれらの相互作用を検討した。その結果従来マウスにおいてIgA特異的産生亢進が報告されたIL-5とTGF-βはヒトにおいてはいずれもそのような特異的作用を有せず、またIL-6との相互作用条件下でもそのような特異的作用を示さないことが明らかとなった。平成4年度はIL-5,IL-6,TGF-βに加えてIL-4との相互作用も同様の対象において検討した。その結果ヒトにおけるIgA産生亢進の特異作用を有するサイトカインはIL-4であることが世界で初めて示された。この特異作用はIL-6の添加によって一層増強されることも示された。これらの成果は平成2年の第11回国際腎臓学会特別講演と第4回アジア太平洋腎臓会議シンポジウム、平成3年の第9回アジア腎臓コロチウム、平成4年の第5回国際IgA腎症シンポジウムと第5回アジア太平洋腎臓会議シンポジウムにてそれぞれ発表され、各種の国際誌または図書の形で出版された。
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