研究概要 |
B型肝炎ウイルス遺伝子の組み込まれたPLC/PRF/5肝癌細胞においてシグナル伝達系がどのような状態にあるかを調べてみた。この肝癌細胞をCキナ-ゼ刺激物貭である癸癌プロモ-タ-テレオシジンとともに培養すると細胞増殖は抑制され、細胞は扁平となり拡大し,サイトケラチンの重合が著明となった。同時に細胞貭には空胞状構造が多数出現した。Cキナ-ゼ阻害物貭であるH_7,W_7,K252などを同時に加えて培養してもこれらのテレオシジン作用は阻止できななかった。けれども無細胞系でCキナ-ゼ活性を測定した場合に,テレオシジンによるCキナ-ゼ活性の上昇はH_7でほぼ完全に抑制された。従って細胞レベルでCキナ-ゼ阻害剤の効果が認められないのは,これらの阻害剤がすみなやかに分解されるか又は細胞内では反応できない立体構造や空間配置になっていることが示唆された。この細胞をホモゲナイズし,細胞貭をカラムで分離すると,Cキナ-ゼ活性は3つのピ-クに分かれた。そのうちのひとつは,通常のCキナ-ゼが溶出されない分画にあり,分子構造の異なるプロテインキナ-ゼが存在すると考えられた。このプロテインキナ-ゼ活性は細胞をテレオシジン存在下で長時間培養してもdown regulateされず,通常のCキナ-ゼと活性も異っていた。このdown regulationをうけないCキナ-ゼ様物貭がテレオシジンによる肝癌細胞の増殖抑制,形態変異に関与しているものと推測された。一方テレオシジンはcーfosの発現を促進させたが,この反応は30〜60分後にピ-クに達しその後漸減する。この一過性の反応はおそらくdown regulateされるCキナ-ゼを介して発現するものと考えられる。従ってこのPLC/PRF/5肝癌細胞でのPKC活性は,down regulateされるPKCとされないPKCが狙っており,後者が細胞増殖抑制や形態変異の誘導など長時間を要するテレオシジン作用と関連することが示唆された。
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