研究概要 |
培養家兎胃粘液細胞を用いてプロスタグランジン(PG)E_2の産生調節機構を中心に検討した。胃粘膜の傷害物質である胆汁酸のうちデオキシコ-ル酸(DC)はPGE_2産生を著明に亢進させた。ケノデオキシコ-ル酸(CDC)にもこの作用があったがタウロコ-ル酸には認められなかった。DCの作用機序を検討した所,PGE_2産生亢進は細胞外Ca^<2+>に依存している事がわかった。protein Kinase CやCalmodulin の関与は示唆されなかった。DCの細胞内Ca^<2+>に与える影響をCa^<2+>感受性色素Indoー1を指標に検討した所,DCは著明に細胞内Ca^<2+>を上昇させた。この作 は細胞外Ca^<2+>を低下させる事でほぼ消失した。以上の検討により胆汁酸であるDCは細胞外Ca^<2+>の流入によりPGE_2産生を亢進させる事が示唆された。G蛋白質を活性化する作用のあるsodium fluorideにもPGE_2産生亢進作用が認められた。sodium fluorideの作用は細胞外Ca^<2+>を低下させても完全には消失しなかった。又Ca^<2+>も弱く上昇させるのみであった。sodium fluorideはcAMPも上昇させた。しかし,PGE^2産生亢進はコレラトキシンでは消失せず,百日咳毒素の影響も受けなかった。これらの結果からsodium fluorideはGsやGi以外のG蛋白質の関与によりPGE_2産生を亢進すると考えられた。生理的agonistとしてはATPによりPGE_2産生亢進が認められた。ATPは細胞内Ca^<2+>上昇作用も有していた。このCa^<2+>上昇パタ-ンは急峻な上昇とその後のプラト-な上昇を示し,PIタ-ンオ-バ-に合致する所見であった。APTのPGE_2産生亢進作用は細胞外Ca^<2+>に依存していた。現在ATPのアナログの作用及び,更にくわしい機構を検討中である。
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