研究概要 |
薬剤性肝障害の発生機序についての研究は長い間にわたって多くなされているが,未だに十分に解明されていない。今回はアセトアミノフェン肝障害,四塩化炭素肝障害についてヒト肝癌培養細胞であるHepG2細胞を用いて検討した。またミクロゾ-ムでの検討も行なった。 〔方法〕 ダルベッコMEN培地に胎児ウシ血清を10%加えた液でHepG2細胞を継代培養した.(1)薬剤を添加し,24時間後のLDHの漏出を調べた。(2)フェノバルビタ-ル,3ーメチルコラントレンを加えてチトクロ-ムP450を誘導した後に薬剤を加えてLDHの漏出を調べた。(3)薬物代謝系を維持することが明らかにされたWilliams培地を用いて同様の検討を行なった。次にラット肪よりミクロゾ-ム分画を作成し,NADPH依存性のアキトアミノフェン代謝産物の産生を測定。更に脂質過酸化に及ぼす上記薬剤の影響を検討した。 〔結果〕 HepG2細胞は薬剤添加によってLDHの漏出をおこさなかった。またチトクロ-ムP450誘導物質の添加もそれに影響を及ぼさなかった.アセトアミノフェンの活性代謝産物の産生は肝毒性と相関がみられた。また脂質過酸化は四塩化炭素によって誘導されたが、アセトアミノフェンでは認められなかった。 〔今後の展開〕 細胞障害を電子顕微鏡的に検討することにした。また初代肝細胞培養を行ないカルシウムの動態を観察することが可能となったので、この系を用いた検討を行なうこととした。
|