研究概要 |
単クロ-ン抗体による免疫組織染色により胎盤型ALPは癌特異性の高いことが判明したため,遺伝子レベルでの発現について検討を試みた。胎盤型ALPを産生しててる新鮮胎盤組織と絨毛上皮癌BeWo細胞株を陽性対象として,胃癌KATOーIII細胞株ならびに小腸粘膜組織よりRNAを抽出し,RTーPCR法を用いて胎盤型ALPmRNAの発現の有無について検討を行った。すなわち,抽出した各RNAにrandom hexamerと逆転写酵素を用いて,cDNAを作成した。胎盤型ALPと小腸性ALPのcDNA塩基配列の比較により,胎盤型ALPに特異的と考えられる領域(214bp)をはさみ込む25 oligonucleotideをDNA合成した。これをprimerとして用いて,RNAより変換されたcDNA中の胎盤型ALPcDNAの特異領域(214bp)を増幅し,胎盤型ALPmRNAの発現の有無についても検索した。その結果,胎盤組織,KATOーIII,BeWo細胞株に胎盤型ALPmRNAの発現が認められたが,小腸粘膜組織にも214bpの胎盤型ALPcDNAの出現が認められた。最近,胎盤型ALPのgenomicDNAの塩基配列が解明され,設定していた214bpは,exon9,10,11から構成されており,特異的と考えられたこの領域も,他領域と同様にexon,intron共に,小腸型ALPと非常に類似していることが判明した。1にて,胎盤型ALPの蛋白レベルの発現は,胃腸上皮化生では認るめられなかったことより,今回のRTーPCR法の結果は,小腸粘膜組織に胎盤型ALPが発現されているというよりも,小腸型ALPmRNAにも交差反応を示した可能性が強いと思われた。また,KATOーIII細胞では胎盤型ALPcDNAのbandが214bpよりも小さなbandとして出現しており,特異領域内の一部の塩基が欠失している可能性が考えられた。現在,これらの点を確認するために,dideoxy法によるDNAsequencingにより塩基配列を決定するなどの実験を継続中である。
|