「目的」B型肝炎ウィルス(HBV)キャリア-にみられる免疫異常は、HBVが樹状細胞に存在することにより出現するか否かを知ることを目的とした。「対象」対象は肝生検により診断し得たB型慢性肝炎50例である。HBV発現transgenic mouse(HBVマウス)は能本大山村教授より供与された1.2HBーBS1040マウス、40匹である。「方法」HBs抗原の染色方法は酵素抗体開接法により行った。HBVマウスとcontrol mouse(Cマウス)をKLHとHBs抗原で免疫した。2週間後に採血し、それぞれの抗原価をELISA法により測定した。樹状細胞の分離はマウス脾からSteinmanらの方法に準じて行なった。「成績」濾胞を伴うB型慢性肝炎50例中19例(38%)で濾胞中心部にHBs抗原を認め、電子顕微鏡ではHBs抗原は樹状細胞の突起表面に一致してみられた。HBVマウスとCマウスのKLHに対する抗体産生は2週間後の抗体価の平均でそれぞれ3.1±0.6、1.5±0.1で、HBVマウスで有意に低値であった(P>0.05)。KLHでプライムしたHBVマウスの樹状細胞とCマウスのT、B細胞(A群)、HBVマウスのTB細胞とCマウスの樹状細胞を1週間培養した上清中のKLH抗体価を測定すると、それぞれ1.2±0.3、0.06±0.03であり、A群で低値であった。HBs抗原でプライムしたHBVマウスの樹状細胞とCマウスのTB細胞(B群)、HBVマウスのTB細胞とCマウスの樹状細胞(C群)を1週間混合培養した上清中のHBs抗体は、B群でのみその産生がみられた。「結論」非特異抗原(KLH)、特異抗原(HBs抗原)刺激ともにHBVマウスで抗体産生能が抑制され、その抑制機構に樹状細胞中HBVが関与していることが示唆された。
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