研究概要 |
急性消化管アニサキス症は日本人にとって稀な疾患ではない.胃アニサキス症の診断は,一部の症例で内視鏡診断が可能であるが,腸アニサキス症は診断困難で無用な開腹を受ける症例が多い.これらの点から,急性消化管アニサキス症の臨床上で,血清生化学的な確実な補助診断法の開発が望まれる.本研究の目的は,アニサキス特異的蛋白に対するモノクロ-ナル抗体を作製し,蛋白の大量収集を行い,診断に有用な免疫測定系を完成させることである.本年度は特異的モノクロ-ナル抗体産生のハイブリド-マの作製と選別に精力が集中された. A.アニサキス76k,64k,60k蛋白に対するモノクロ-ナル抗体の作製: (1)マウス・モノクロ-ナル抗体の作製:マウスにアニサキス虫体を1週間隔で経口感染させ,または開腹し虫体を直接腹腔中に投与し,血中抗体の上昇を確認した後に,脾細胞と653細胞を細胞融合させて,ハイブリド-マを作製した. (2)得られたハイブリド-マの中から,ELISA法にて選別し,アニサキス粗抗原に対する抗体産生の多いクロ-ン20個を得た. (3)現在,これらの中からImmuneblotting法によりアニサキス特異的76k,64k,60k蛋白に対する抗体産生のハイブリド-マを確認中である。 B.血中アニサキス抗体に関する新しい知見: (1)本研究に関する新しい知見として,急性胃アニサキス症に限らず,臨床像の異なる急性小腸アニサキス症,大腸アニサキス症においても76k,64k,60k蛋白に対する血中抗体反応が認められ,また患者血中抗体は虫体特異的76k,64k,60k蛋白と反応するが,従来から対応抗原と考えられていたアニサキスヘモグロビンとは反応しないことを確認した.
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