研究概要 |
ストレスにおける胃粘膜障害を引き起こす原因の一つとして,活性酸素種を中心としたフリ-ラジカルの関与が注目されている。活性酵素の発生源としては,細胞内のキサンチンオキシダ-ゼ系と細胞外では好中球のNADPHオキシダ-ゼからのO^-_2産生が主である。そこで本年は,ストレス潰瘍の発生におけるフリ-ラジカルの役割と免疫系の関与を調べる目的で,食餌制限ストレスをマウスに負荷し,胃粘膜の活性酸素消去系酵素活性とマイロファ-ジのO^-_2産生能について検討した。 方法としては,3ケ月齢,雄C3H/Heslcマウスをそれぞれ個別に飼育し,食餌時間を1日1時間に制限するストレスを負荷して1〜5日間,飼育した。食餌制限2回目より肉眼的に急性胃粘膜病変(AGML)が認められるようになり,5日目にはすべてのマウスにおいてAGMLが出現した。胃粘膜の抗酸化酵素としてグルタチオンペルオキシダ-ゼ,グルタチオンレダクタ-ゼ,カタラ-ゼ,SODの活性を測定したが,SOD活性以外は食餌制限ストレスの影響は認められなかった。他臓器と比較すると,胃粘膜のSOD活性は相対的に低いことを我々はすでに報告しているが,その胃粘膜SOD活性はストレスの進行に伴って有意な低下を示した。一方,腹腔マクロファ-ジからのPMA刺激によるO^-_2産生は,ストレスの経過と共に上昇を示し,これらがAGMLの発症と関係しているものと推定された。免疫学的パラメ-タ-としては,NK活性を測定したが,ストレス負荷後1,2回目にはNK活性は上昇し,5回目には有意に低下していた。以上の研究によりストレス潰瘍の発症機序の一端が解明されたものと考えている。
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