研究課題/領域番号 |
02670318
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
織田 正也 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20129381)
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研究分担者 |
石井 完治 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (40193247)
船津 和夫 東京歯科大学, 市川総合病院・内科, 助教授 (00129644)
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キーワード | 原発性胆汁性肝硬変 / 胆管破壊 / 細胞傷害性T細胞 / HLAーDR / アクチンフィラメント / 中間系フィラメント / サイトケラチン / 免疫酵素抗体法 |
研究概要 |
原発性胆汁性肝硬変(PBC)患者肝組織の免疫酵素抗体間接法による観察では、慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)の所見を示す胆管周囲の浸潤リンパ球の多くはLeu 2a陽性細胞(cytotoxic/suppr essor T cell)に相当した。さらに、主要組織適合抗原class IIであるHLAーDRの発現を同様な方法により検索すると、胆石患者の生検肝組織においてHLAーDRは肝類洞内皮細胞内に認められたが、胆管上皮細胞内にはみられなかった。一方、PBC患者の生検肝組織においては肝類洞内皮細胞の他に門脈域内の胆管上皮細胞内にHLAーDRの局在を示すperoxidase陽性反応が観察された。生検肝組織において細胞骨格系であるmicrofilments(MF)及びintermedaiate filaments(IF)の分布を透過型電顕で観察するとMFは毛細胆管周囲に存在し、胆管上皮細胞内では特に管腔側形質膜直下に存在するが、IFは胆管上皮細胞内に豊富に認められる。actinをブタ子宮筋から、cytokeratinを継代培養細胞株PtK_2から抽出、後者をさらにSDSーpolyacrylamide gelelectrophoresisにより52kDのCK1と45kDのCK2に分け、各々Balb/cマウスに免疫し、骨髄腫細胞株P3U1と融合させhybridomaを作製、単クロ-ン抗体を作製した。これらの単クロ-ン抗体を用い生検肝組織を酵素抗体間接法により観察すると、actinは既述のMFの分布に一致して存在し、CK1はIFの局在に一致して胆管上皮細胞内に豊富に存在、CK2は肝細胞内に少量存在した。PBC生検肝組織においてもCK1の局在を示すperoxidase陽性反応が胆管上皮細胞に限局して認められた。以上より、PBCにおいては胆管上皮細胞に表出されるHLAーDRをcytotoxic T cellが認識し、胆管破壊の引き金になると考えられる。胆管破壊に引き続き胆管上皮細胞の最大構成分であるIF、すなわちCK1が細胞外に流出し、macrophageあるいはB cellが異常に反応し、CK1に対する自己抗体が形成され、これが免疫複合体を形成し、PBCの進展機構に関与することが推定される。
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