研究概要 |
平成3年度は原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis:PBC)における胆管破壊機構解明の基盤となるactin filaments(AF)及びcytokeratin(CK)の亜分画CK1(52kD),CK2(45kD)に対する単クロ-ナル抗体を作製し,PBC患者血清中の抗AF抗体及び抗CK1,CK2抗体価を半定量的に分析するためのELISA法を確立し,各抗体価をPBCの病期別に測定した。その結果,抗CK1抗体価は早期のPBCstageI,II期がstageIII,IV期に比して高値であることが証明され,PBC病期診断にきわめて有用である。また,抗CK1抗体価を160倍希釈血清を用い他の肝疾患,急性肝炎,慢性肝疾患(代償期,非代償期),自己免疫性肝炎及び健常者の血清を用いて測定したところいずれも有意な上昇を認めなかった。以上から,高力価の抗CK1抗体の存在はPBCに特異的と考えられ,胆管破壊を反映しているものと推測された。一方,抗CK2抗体価は抗CK1抗体価と同様PBC患者血清に対して,他の肝疾患に比して高い陽性率を示すが,その抗体価はstageI,IIの病初期の抗CK1抗体価ほどの高力価は認めなく,病期別に有意な変化を示さなかった。PBC患者血清中に出現する抗AF抗体は,胆管形質膜の障害の結果流出した胆管上皮細胞内のAFに対して形成される可能性があるが,抗AF抗体価は特にPBC病期との相関は得られていない。PBCの病理組織学的特徴である慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)における胆管上皮細胞とリンパ球サブセット,主要組織適合抗原さらにはICAM(intercellular adhesion molecule)ー1の局在との関係を追求した。すなわち,各々単クロ-ナル抗体を用いて,PBC患者生検肝組織を免疫酵素抗体間接法で観察した結果,胆管上皮細胞に密接するリンパ球はLeu2a陽性細胞(cytotoxic/suporessor Tcell)であり,胆管上皮細胞質内及び形質膜上に主要組織適合原classIIのHLAーDRが存在すると共に胆管上皮形質膜上にICAMー1が同時に表出されることが証明された。
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