研究概要 |
本年度は原発性胆汁性肝硬変(PBC)における胆管破壊機構解明の基盤となるcytokeratin(CK)の亜分画CK1(52kD)に対する抗CK1単クローン抗体および抗糸粒体抗体のM2亜分画に相当するpyruvate dehydrogenaseに対する抗M2抗体を用いてursodeoxycholic acid(UDCA)600mg/日の投与前後における症候性(s-),無症候性(a-)PBC患者の両抗体価の経時的変化を投与後2年までELISAで測定し比較検討した。抗CK1抗体価はs-,a-PBCの両者においてUDCA投与前値に比して,投与後2年まで経時的に有意な抗体価の低下を示した。抗M2抗体価はs-,a-PBCの両者においてUDCA投与前値に比して,その推移の一部に有意差は認めなかったが,全経過において抗体価の低下を示した。両者の抗体価の低下は長期UDCA療法の免疫系への関与を示唆しており,特に,胆管破壊の結果産生された高力価の抗CK1抗体価は病態を反映し,長期UDCA療法によるs-,a-PBCの同抗体価の低下はこの病態是正を表わすと考えられた。次に,Leu2a,主要組織適合抗原class IIのHLA-DR,細胞間接着分子であるICAM-1の単クローン抗体を用いた免疫組織化学的手法により,PBCにおける自己免疫異常と胆管破壊機構の関係を検討した。PBC患者生検肝組織では特に,CNSDCの所見を示す胆管上皮形質膜上にICAM-1が強く表出され,同時に胆管上皮細胞内にHLA-DRの存在が証明され,さらに,ICAM-1が表出される変性胆管上皮に接するリンパ球は主にLeu 2a陽性を示し,一部にLeu 3a陽性であった。PBCにおける胆管破壊機構の最初の引き金としてHLA-DRが胆管上皮細胞内に異所性表出され,Leu 3a陽性のhelper Tcellが胆管上皮形質膜上に表出したICAM-1との接着を介して胆管上皮細胞内のHLA-DRを認職し活性化された後,cytokine networksを介して終局的にLeu 2a陽性のcytotoxic Tcellが活性化され,胆管上皮細胞形質膜上のICAM-1との細胞間接着により細胞傷害性を発揮し,胆管破壊が誘発されると考えられた。
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