体重270gのEHBRを全ての実験に用いたが、血清ビリルビンは平均6mg/mlとコントロ-ルの約60倍に上昇し、血清胆汁酸の軽度上昇と胆汁流量の低下(コントロ-ルの約60%)を認めた。トレ-サ-量の ^<14>Cーリトコ-ル酸の胆汁排泄はほぼ正常に近かったが、同胆汁酸のグルクロナイドおよびサルフェ-トの胆汁排泄は著明に遅延し、グルクロナイドで8.4±6.9%、サルフェ-トで28±16%と、共にコントロ-ルでの90%に比し著明に低下していた。また、EHBRではこれらの抱合体のタウリン抱合の比率が増加していた。グルクロナイドの生成が生じるような ^<14>Cーケノデオキシコ-ル酸の大量投与をした場合もEHBRでは胆汁排泄が軽度に遅延したが、コントロ-ルで約10%のグルクロナイドが胆汁中に排泄されたのに対し、EHBRではグルクロナイドの排泄は認められなかった。肝サイトゾ-ルの胆汁酸結合蛋白の検討では、glutathione Sーtransferase活性に対応するY蛋白、3αーhydroxysteroid dehydrogenaseに対応するY'蛋白、1ーanilinoー8ーnaphthalene sulfonate 結合に対応するZ蛋白の胆汁酸結合のパタ-ンは、コントロ-ルとEHBRで差はみられなかった。遊離肝細胞によるリトコ-ル酸およびそのグルクロナイド、サルフェ-トの取込についても、コントロ-ルとEHBRで差は認められなかった。コントロ-ルで胆汁うっ滞を生じる投与量(0.1μmol/min/100g体重で40分間)のリトコ-ル酸グルクロナイドをEHBRに投与しても胆汁流量に変化はなかった。以上の結果から、EHBRは有機陰イオンと共通の胆汁酸グルクロナイドおよびサルフェ-トの胆汁排泄機構の先天的欠損があり、ヒトでのDubinーJohnson症候群に類似した病態であると考えられる。また、本ラットにおける通常の胆汁酸の軽度の排泄障害は、長期にわたり肝内にビリルビンが蓄積するための二次的なものであると考えられる。
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