B型肝炎ウイルス(HBV)の感染系の確立のため、培養肝細胞が安定して供給できるという利点から、我々の教室を樹立を行った。JHHー1、2、4、5、6、7の6株と、対照してHBs抗原産生性のHuHー1、PLC/PRF/5の2株の計8株のヒト肝細胞癌株を用い、本研究を行った。JHH株の6株の中、JHHー7はHBVゲノムの組込みがSouthern blot hybridizationにて確認されているが、他の5株においては組込みは見られず、HBVの接種対象となる株細胞と考えていた。しかし、内外の研究の進展に伴い、より感度の高い方法にて、株細胞のHBVの関与の有無について確認する必要性が生じてきた。そこで、制限酵素処理にて作成したHBVDNAの断片をプロ-ブとして、緩和な条件下でSouthern blot hybridizationを試みた。その結果、BalI処理の断片にて5.4Kbの位置にバンドが確認されたが、このバンドは各株に共通であるため、組込まれたHBVゲノムとは考えられず、むしろ、C型肝炎ウイルスとの関連が今後問題になると思われる。さらに、組込みの頻度を高いとされるHBs抗原領域に対応するプライマ-を作成し、超高感度のPCR法にて検討を行った結果、対照のHuHー1株ではバンドが認められたが、JHH株ではバンドは見られなかった。HBVの接種対象となる株細胞が確認されたので、次に接種時の種々条件について検討を行った。特に、温熱はウイルスの感染と増殖に大きな影響をもたらすことが知られているため、HBs抗原の産生に与える温熱の影響を、HBVゲノムが組込まれているPLC/PRF/5株にて、12段階温度勾配培養装置を用い、検討を行った。その結果、培養上清中のHBs抗原量は37℃で最も高値を示すことが判明した。これらの検討の結果を踏まえて、JHH株細胞にHBe抗原強陽性の血清の添加を行い、感染の成立の検討を行っているが、現在までのところ有意な結果は得られていない。
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