研究概要 |
1 肝癌のγーカルボキシレ-ションシステムの検討 手術にて摘出された肝組織より超遠心法でマイクロソ-ムを取り,還元型vit.K添加にて取り込まれる^<14>COOHの放射活性を指標にγーcarboxylase活性を測定した。PIVKAーII陽性の癌部でも活性は認められたが,組織のPIVKAーIIの濃度による影響が大きかった。vit.Kの量による活性の変化は明らかでなかった。またヌ-ドマウスに移植したヒト肝細胞癌の組織でもγーcarboxylase活性は認められた。(非癌部との活性の比較は解析中) 2 肝癌のvit.Kの取り込みとPIVKAーIIの分泌能に関する検討 肝組織中のvit.Kを測定したところ,癌部は非癌部に比して濃度が低い傾向があった。また癌部のPIVKAーIIの濃度は非癌部に比して高い傾向があったが血中のPIVKAーIIとの相関は認められなかった。また癌組織と血中の値が大きく解離している症例も数例みつかった。 3 プロトロンビン前駆体の産生亢進に関する検討 肝癌組織及びPIVKAーIIを産生する肝癌培養細胞huHー1からmRNAを抽出してプロトロンビンmRNA量を測定した。両者共に非癌部や他の培養細胞に比してmRNA量の明らかな増加は認められなかった。 以上より,肝癌においてもγーカルボキシレ-ションシステムは大きな障害はなく作動しており,PIVKAーII産生機序には肝癌のvit.Kの取り込み障害が関与していると推測された。プロトロンビン前駆体の産生亢進の関与は現時点では不明である。 また血中へのPIVKAーIIの出現については肝癌のPIVKAーII産生能のみならず,その分泌能(細胞内のPIVKAーIIの貯蔵閾値)が影響していると考えられ,個々の癌組織において多様性があると推測された。
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