研究課題/領域番号 |
02670327
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
杉本 元信 東邦大学, 医学部, 助教授 (30120281)
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研究分担者 |
伊藤 金次 東邦大学, 医学部, 講師 (40057758)
山室 渡 東邦大学, 医学部, 助手 (80166777)
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キーワード | グルタチオン Sートランスフェラ-ゼ / 実験肝癌 / 免疫組織化学 |
研究概要 |
Glutathione Sーtransferase(GST)は肝をはじめ広く生体内に存在し、発癌物質を含む内因性および外因性異物と還元型glutathioneとの抱合を触媒する解毒酵素である。ヒト胎盤由来のGSTーπと同様、ラットでこれに相当するGSTーpも肝前癌病変の指標酵素とされているが、その発現意義は末だ明らかではない。そこでWistar系ラットに発癌物質diethylnitrosamine(DEN)を持続投写し、4週目から投与継続と投写中止の2群に分け、経時的に犠牲死させ、肝癌発生過程と治癒過程におけるGSTーpの肝小葉内の分布と消長を同時期の肝細胞内proliferating cell nuclear antigen(PCNA)のそれと対比し検討した。GSTーpおよびPCNAは、それぞれ抗GSTーp抗体、抗PCNA抗体を用い、ともに免疫組織化学的手法により検討した。 結果: 早期(4日目)より肝小葉内にGSTーp陽性細胞が散在性に出現し、次第にenzymeーaltered fociの形態を呈した。DEN投与を継続すると、4〜8週後GSTーp陽性のhyperplastic noduleとなり、8〜12週後には癌結節がみられるようになったが、癌細胞ではGSTーpの染色性は減弱した。一方、PCNA陽性細胞は経時的に増加し、癌結節でもなお強陽性を保った。4週目にDEN投与を中止した群では、enzymeーaltered fociは可逆的にGSTーpが陰性排し、PCNAも陰性化したが、すでにhyperplastic noduleとなった部位ではGSTーpとPCNAの陰性化はみられなかった。以上の結果より、GSTーpは肝前癌病変の指標酵素であるが、癌に分化した際には陰性化し、また可逆的な前癌病変では陰性化することが確認された。
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