研究概要 |
【目的】ラット肝化学発癌過程において,前癌病変である過形成結節に胎盤型glutathione S‐transferase‐P(GST‐P)が発現する。我々の研究ではdiethylnitrosamine(DEN)投与8週後に過形成結節を認め,免疫染色で同部はGST‐P陽性であったが,継続投与では12週以後癌化を認め,同部はGST‐P陰性となった。また,4週後にDENを中止すると,さらに4週後にGST‐P陽性の過形成結節が認められたが,8週後には癌化は認められず,過形成結節は必ずしもすべて癌化しないことが確かめられた。今回,4または8週でDEN投与を中止した場合,肝内GST‐Pがいかなる消長を示すかをDNA probeを用いて半定量し,組織像と対比検討した。 【方法】Wistar系雄性ラットにDEN(200mg/kg)の腹腔内投与を1回行い,以後DEN濃度0.05%になるように飲料水に溶解し,4または8週継続投与.中止後普通飼料で飼育し,4,8,12週後に犠牲死させ,肝を摘出した。肝組織のRNAを抽出,電気泳動後, Northern blotを行い,ラットGST‐P cDNA(東大・村松博士供与)とハイブリダイゼーションし,オートラジオグラフィーを行った。組織学的検討は抗GST‐Pを用い,SABC法にて免疫染色し,光顕下に行った。 【成績】DNA probeによる検討の結果,DEN投与4週目には肝組織内GSP‐Pは陰性で,投与中止後も陰性のままだった。8週投与ではGST‐Pは陽性となり,投与中止後陽性度は増強した。組織学的に,投与8週目に認められたGST‐P陽性の過形成結節は投与中止後も増大傾向を示し,中止4週後にはGST‐P陰性の癌病巣が認められた。 【結語】DEN誘発肝癌は被曝期間に依存し,短期間ではGST‐P陽性過形成結節ができても発癌する可能性は低く,一定期間を超えると投与中止後も過形成結節は増大し,GST‐Pの発現が増強し,発癌へと向かうことが示唆された。
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