研究概要 |
過敏性肺炎における病変の持続には細胞性免疫が重要と考えられ,病変部位には主としてTリンパ球の集積がみられる.病変局所から気管支肺胞洗浄(BAL)にて得られたTリンパ球(PBL)のT細胞リセプタ-(TCR)のレパ-トリ-について解析を加え,末梢血リンパ球と比較した。解析には可変部(V)領域,すなわちβ鎖の5,6,8,12ファミリ-およびα鎖の2に対して反応する特異的なモノクロ-ナル抗体を用いた. 1】夏型過敏性肺炎患者9例中5例のBALリンパ球でTi3A(βV8(a)に対する抗体)陽性細胞が5%以上であった.CD3のtwo colorでみるとすべてCD3陽性であった.すなわちβV8(a)のTCRを持ったTリンパ球の集積が認められ,TCRのβ鎖の再構成に偏りが推測された.一部の症例でβV8(a)はCD8細胞に優位であったが,ほとんどがCD4,CD8の両者に陽性であった.PBLでは1例だけ観察された。2】16G8(βV8(a))で認識されるTCRは,9例中6例のBALリンパ球で5%以上を示し,PBLでも9例中3例に認められた.3】W112(βV5(b))が9例中1例のBALリンパ球で5%以上を示し,LC4(αβV(a))も同様に9例中1例であった.PBLでも9例中1例に5%以上であったが,BALリンパ球とPBLとは一致した所見を示さなかった.4】鳥飼病では2例中1例のBALリンパ球にTi3A(βV8(a))が5%以上を示し,PBLでも1例に認められたが,両者は別々の症例であった.1例の無症候鳥飼育者ではとくに高値を示すTCRが検出されなかった.5】鳥飼病1例から得たBALリンパ球とPBLを,抗原あるいはPHAで刺激して特定のクロ-ンが増殖するかどうか検討したが,刺激前後で差を認めなかった. 以上,過敏性肺炎症例の一部はTCRに偏りがみられ,特定の細胞クロ-ンが集積している可能性が示唆された.
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