研究概要 |
気管支喘息の病態における非アドレナリン非コリン作動性抑制神経系の関与を解明するための基礎実験として,同神経系の神経伝達物質と推定されているpeptide histidine isoleucine(PHI)のラット気道における免疫活性を測定した。測定には我々が確立したラットPHIラジオイムノアッセイ法を用いた。ラットから気道組織を採取する際にはプロテア-ゼによるPHIの分解を抑制する目的で,マイクロ波を用いた。マイクロ波照射後採取した気管,肺外気管支,肺を0.5N酢酸存在下でホモジナイズし,煮沸後超遠心して得られた上清を凍結乾燥して測定に供した。ラット肺組織から抽出した月一検体について,アッセイ内ならびにアッセイ間変動係数を求めた結果,アッセイ内変動係数6.2%,アッセイ間変動係数4.8%で,十分に信頼出来るアッセイ系であることが確められた。ラット気道における組織湿重量1gあたりのPHI負疫活性はラット6匹から得られた検体について測定した結果,気管5.12±1.35pmol,肺外気管支1.66±1.15pmol,肺0.12±0.06pmolで,PH2は中枢気道により多く存在した。本アッセイ系で,PHIの前駆物質やPHIの分解産物が測定されていないことを確める目的で,ラット気管抽出物をSephadex Gー50によりゲル瀘過して得られた各分画のPHI免疫活性を測定した。その結果,PHI免疫活性は一峰性のピ-クを示し,同じカラムで ^<125>I標識PHIが溶出される分画と一致したことより,PHIそのものを測定していることが確認された。すでに確立されているラジオイムノアッセイ法により,ラット気道vasoactive intestinal peptide(VIP)を測定した結果,湿重量1gあたりのVIP免疫活性は気管5.93±1.17pmol,肺外気管支1.60±0.51pmol,肺0.11±0.02pmolで,PHIの測定値に近い値であった。従って,ラット気道の神経細胞内では,PHIはVIPと共通の前駆物質より1:1の割合で合成されるものと推定された。
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