1.チトクロムP450(P450)活性増強ラットから摘出かん流肺を作製し、KC1およびU46619による肺血管収縮能に及ぼすシクロオキシゲナーゼインヒビターの影響を見たところコントロールと比べ差をみなかった。前年度の結果もふまえ、P450活性増強の影響は肺conduit vesselよりも肺resistance vesselで強く発現され、低酸素性肺血管収縮(HPV)およびフェニールエフリンに対する収縮能の減弱とアセチルコリン(ACh)による拡張反応増強を選択的にもたらしていると考えられた。 2.ラット摘出肺動脈リングでのHPVをアラキドン酸のP450代謝物である56EETそしてリノール酸の白血球P450代謝物であるLeukotoxin(Lx)はともに抑制した。前者の作用はシクロオキシゲナーゼ依存性で後者は非依存性であった。Endothelin1による肺動脈リングの収縮をLxが拡張する際、Ca channel blocker(ジルチアゼム、ニッケル)の存在は影響を与えず、これは前年度のラット培養平滑筋胞(A785)を用いた実験結果をふまえると、LxはCa^<2+>の細胞内から細胞外への汲み出しを増強させるという新しい機序が明らかとなった思われる。更にPhorbol myristate acetateによる収縮をLxはかえって増強した。すなわち、Lxの内皮非依存性拡張能はPKC inhibitor様ではないことも明らかとなった。摘出かん流肺でLx10μmo1以上の投与(血管拡張作用を示す10倍以上の濃度)で肺障害をもたらす際、EDRF(NO)inhibitorがそれを抑制することも明らかとなった。これはLxのEDRF産生・放出が適度であれば血管拡張作用を示し過度であれば肺障害をもたらす事を示唆するものと思われる。
|