平成2年度は、in vitroの実験系で免疫反応による気道からのサブスタンスPの遊離がされることを報告したので、平成3年度は、この現象がin vivoでも認められるかどうかについて検討した。 麻酔下に感作モルモットの肺抵抗を測定した。抗原で気道収縮を誘発させた後に、サブスタンスPの分解酵素エンケファリナ-ゼを阻害することにより、その気道収縮が増強した。次に、感作モルモットにカプサイシンを全身投与し、内因性のサブスタンスPを枯渇させた。そこで、抗原で気道収縮を誘発させた後に、エンケファリナ-ゼを阻害したが、気道反応の増強は認められなかった。以上のことより、免疫反応にて、気道からサブスタンスPが遊離されていることがin vitroにても確認された。現在Journal of Applied Physiologyに投稿中である。 2)無髄求心神経からのサブスタンスPの遊離を抑制する薬剤の研究 サブスタンスPの遊離を抑制する可能性のある、α、βアドレナリン作動薬、エンケファリン、テオフィリン、コルチコステロイドなどを気道組織に投与した場合、それらの薬剤の単独作用で、平滑筋の収縮作用が制御された。よって、正確なサブスタンスPの遊離抑制作用については検討できなかった。そこで、免疫反応によるサブスタンスPの遊離機構を解明するために、テトロドトキシンにて神経の伝導をブロックした後に、抗原で気管支組織収縮させ、エンケファリナ-ゼを阻害したところ、その収縮反応は増強した。この結果から、免疫反応にて遊離された化学伝達物質は、直接的に神経に作用してサブスタンスPを遊離させており、神経のブロックのみではサブスタンスPの遊離は、制御できない可能性が示唆された。この研究は、平成4年5月のAmerican Thoracis Societyの総会で発表する予定である。 3)サブスタンスPの遊離を抑制する薬剤の咳嗽抑制作用についての研究 サブスタンスPの遊離を抑制する薬剤の研究が十分進んでいないので、今後、検討する予定である。
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