研究概要 |
平成2年度補助金のとに行なった研究の実績は下記の諸点である。 (1)呼吸音の量子化:アナログ呼吸音時系列デ-タをアナログ/ディジタル(A/D)変換器(ADXー98E,カノ-プス社製)を用いて量子化し,離散的な時系列デ-タを,コンピュ-タに記憶させるシステムを完成した。そのシステムは標本化周波数10kHzで5秒間連続A/D変換可能であった。 (2)量子化された呼吸音デ-タ-の解析アルゴリズム:この様に量子化された呼吸音の数値デ-タ-から不連続性ラ音を抽出するアルゴリズムを検討した。適応化平滑化法,フ-リエ変換,周波数領域平滑化,積算平均化,線形予測法を用いてスペクトルム包絡を求める方法,ケプストラム法,PARCOR係数法などの方法を検討対象とした。検討した範囲では不連続性ラ音を抽出する最適な方法は適応化平滑化法であった。比較的簡明であること,人為的に入力すべきパラメ-タ-が比較的少ないことなどがそのアルゴリズムの利点として挙げられた。 (3)不連続性ラ音の抽出精度の検討:種々の症例から録音された不連続性ラ音を含む呼吸音を上記のアルゴリズムによって解折し不連続性ラ音を抽出した。不連続性ラ音がどの程度正確に抽出されたかを以下の方法によって検証した。 (1)抽出された不連続性ラ音以外の部分を雑音部分を雑音と判断し,その除外し不連続性ラ音のみからなるディジタルデ-タ-ファイルを各症例について作成した。このディジタルデ-タ-をディジタル/アナログ(D/A)変換器(DAXー98,カノ-プス社製)で再生した。この不連続性ラ音だけからなる再生音と不連続性ラ音を抽出する前の生の音とを複数の呼吸器専門医が聞き比べた。両者に差異を指摘する医師はいなかった。 (2)従来から行なわれている方法によって症例から録音された生デ-タ-を周波数分析した。抽出された不連続性ラ音のみからなるディジタルデ-タ-を周波数分析した。周波数分析にはフ-リエ解折および自己回帰モデル解折を用いた。生デ-タ-からの周波数分折結果と抽出された不連続性ラ音のみからなるディジタルデ-タ-からの周波数分析結果との間に有意な差を見出さなかった。 (4)今後この方法による不連続性ラ音抽出方法を臨床応用するすることが可能であり有用性があると考えられた。
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