研究概要 |
本年度の研究として,我々は食作用という生体の非特異的防御作用の中で最も重要な働きをするヒト好中球NADPH酸化酵素について,ステロイド剤投与患者のPMA刺激好中球本酵素活性(全細胞系)を測定するとともに,健康成人より単離した好中球を用いて,全細胞系および膜酵素画分を可溶化し細胞質可溶性画分とともに再構成した無細胞系における本酵素活性に対するステロイド剤をも含めた抗炎症剤の修飾機構を検討した。ステロイド剤(プレドニン1日30mg,2〜4週間)使用後の全細胞系の平均本酵素活性8.4nmol/10^6細胞/分は,使用前の22.0(単位略)に対して有意に低下していた。アセチルサリチル酸(ASA),サリチル酸(SA),インドメサシン(IM),ハイドロコ-チゾン(HC)などの抗炎症剤は,全細胞系および無細胞系の本酵素活性を濃度依存性に抑制し,50%阻害濃度(ID_<50>)は,全細胞系でそれぞれHC50μM,IM180μM,SA3mM以上,ASA3mM以上,および無細胞系でそれぞれHC40μM,IM180μM,SA1.3mM,ASA1.35mMであった。また,こられの抗炎症剤はその前処理の時間に依存して無細胞系でのNADPH酸化酵素活性を阻害し,本酵素のNADPHに対するVmaxを著明に低下させたが,同Km値を変化させなかった。本研究における成績は好中球活性化前に抗炎症剤を加えた結果であり,全細胞系および無細胞系において本酵素を活性化した後に薬剤を加えた場合には全く抑制効果が認められなかった。これらの結果より,HC,IM,SA,ASAなどの抗炎症剤は,ヒト好中球NADPH酸化酵素のNADPHに対する親和性を変えずに酵素活性を阻害し,その作用は直接作用ではなく,酵素の活性化を阻害することが示唆された。
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