研究概要 |
情動ストレス(拘束)によって,受動感作モルモットの卵白アルブミン(OA)吸入時の気道反応が亢進することを前年度に報告したが,知覚神経末端のサブスタンスP(SP)やcarcitoningeneーrelated peptide(CGRP)を枯渇させる量のカプサイシン(50mg/kg)を投与して,7日後にOA抗原吸入誘発試験を行うと,16時間の金網拘束の有無にかかわらず、対照群に比較してカプサイシン投与群の気道反応は減弱していた。また,アトロピンの前投与によっても気道反応は抑制された。このことは,神経ペプチド類も副交感神経も気道反応を修飾していることを示唆している。 アナフィラキシ-反応の条件づけの実験では,OAで吸入感作したモルモットにOA(無条件刺激)と硫黄臭のあるdimetylsulfide(DMS)(条件刺激)をpairで7回反復吸入させた後,DMS,OA,生理食塩水の吸入を行うと,条件づけ群では,DMSのみの吸入で,OAを吸入させた時と同じ程度に血中ヒスタミン値の上昇が認められ,対照群との間に有意差が認められた。Freund's comlete adjuvantとOAを皮下注射して感作したモルモットでは上記の条件づけによる血中ヒスタミン値の上昇は認められなかった。この方法で感作した動物では,OA吸入時の気道反応が弱く血中ヒスタミン値の上昇も弱かったことから,条件づけによるヒスタミン遊離にはある程度強いアナフィラキシ-反応が必要であることが示唆された。一方,DMS吸入時はOA吸入時にみられる強い呼吸困難は認められなかった。βーブロッカ-であるプロプラノロ-ルを投与しても,DMS吸入時の気道反応の亢進は認められなかった。ヒスタミン遊離が条件づけされたことから神経一肥満細胞間に機能的連絡があることは確認されたが、血中に上昇したヒスタミンがどの組織の肥満細胞から遊離されたものか,今後の検討が必要になると思われる。
|