研究概要 |
北海道在住の臨床的に診断確実な多発性硬化症の症候分析より,急性横断性脊髄症を経過中に呈する従来より本邦に特異的な多発性硬化症とされる群の他に,欧米の多発性硬化症に類似するタイプが北海道ではより多く存在することが証明された。そこで,この2群間に磁気共鳴画像上の差があるのかを検討した結果,前者の日本型の多発性硬化症では大脳白質病変はより少なく,また,脳幹病巣もより少ないことが明らかになった(J Neurol Sci,1992,印刷中)。そこで,人種的要素も検討するため63症例の多発性硬化症でHLAを測定したところ,日本型の多発性硬化症ではHLAーDQw7,欧米型ではDR_4,DRw8との相関を示唆する結果が得られており発表予定である。また,本邦における多発性硬化症の髄液でオリゴクロ-ナルバンドの出現率が低いことが問題となっているため,カナダ・バンク-バ-のブリティッシュコロンビア大学多発性硬化症外来と共同で我々の多発性硬化症患者の髄液20検体を送り同一方法で検討,解析中である。 多発性硬化症は中枢神経での髄鞘を侵す脱髄性疾患として知られているが,末梢神経での髄鞘が障害される例が存在するか否か問題となっている。我々は多発性硬化症の1つのタイプであるDeviC病で,末梢神経の障害が同時に起こっていることを証明した(Jap,J.Psychiatr.Neurol,1991)。一方,慢性多巣性脱髄性神経炎でその中枢神経に多発性硬化症を思わせる病巣が出現することも報告(Muscle and Nerve,1991),この両者の関係の追求が必要となっている。 多発性硬化症の症候学は多彩であり,その中でもUseless hand,ndromeの存在や,画像上,脊髄空洞症様の病巣の存在を証明した。 北海道全体の多発性硬化症を把握することは必須であり、計画をさらに進めている。
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