研究概要 |
北海道在住の臨床的に診断確実な多発性硬化症の症候分析より、急性横断性脊髄症を経過中に呈する従来より本邦に特異的な多発性硬化症とされる群の他に、欧米の多発性硬化症に類似するタイプが北海道ではより多く存在することが証明された(J Neurol Sci,1990)。そこで、この2群間に磁気共鳴画像上の差があるのかを検討した結果、前者の日本型の多発性硬化症では大脳白質病変はより少なく、また、脳幹病巣もより少ないことが明らかになった(J Neurol Sci,1992)。そこで、人種的要素も検討するためPoserらの分類で臨床的に確実な43症例の多発性硬化症でHLAを測定したところ、全体としてはHLA-DRw8との相関が示され、欧米でのDR2とは異なる結果が得られた。また、そのうち日本型の多発性硬化症ではHLA-DQw7、欧米型ではDR4、DRw8との相関を示唆する結果が得られた(Acta Neurol Scand,1992)。また、本邦における多発性硬化症の髄液でオリゴクローナルバンドの出現率が低いことが問題となっているため、カナダ・バンクーバーのブリティッシュコロンビア大学多発性硬化症外来と共同で検討、解析中である。多発性硬化症と臨床的に診断される症例の中で、その経過中に視神経炎、横断性脊髄炎を繰り返すものがあり、とくに日本型の多発性硬化症の特徴ともなっている。そのうち、抗カルジオリピン抗体が陽性を示す症例が存在することが明かとなり、今後は従来多発性硬化症とされていた症例よりこれらの疾患を分離していく必要性を提起することになった(Acta Neurol Scand,1993)。北海道は、その気候、風土、生活様式が北方圏諸国と極めて類似することより、本邦での多発性硬化症の疫学を考える上で特異な位置を占めており、北海道において臨床的並びに疫学的研究をすることは本邦のみならず世界的に見ても重要であり、その計画をさらに発展させる予定である(北海道医学雑誌、1993)。
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