研究概要 |
我々はこれまで剖検例の検索によりMELAS(mitochondrial myopathy,encephalopathy,lactic acidosis,and strokeーlike episodes)の脳血管,脈絡叢,脳下垂体前葉に著明なミトコンドリア異常の存在することを見い出し,これらが本症における脳病変の発生と病態に密接に関与していることを明らかにしてきた。本研究では,MELASと共にミトコンドリア脳筋症の代表的疾患であるMERRF(mitochondrial encephalopathy with raggedーred fibers)についても検索を拡げ,下記の新しい知見を得ることができた。 1.MERRFにおける脳血管のミトコンドリア異常 2剖検例の脳血管系をMELASにおけると同様に検索した結果,血統平滑筋組胞,内皮細胞に軽度ながらMELASと同質のミトコンドリア異常の存在することを見い出した。この所見はMERRFの症例の約30%に認められるとされている脳卆中様症状の発生に関与していると考えられる。 2.MERRFにおける脳下垂体前葉のミトコンドリア異常 MERRFの脳下垂体前葉にも,MELASと全く同質の変化が,同程度に存在することが判明した。この変化は本症患者に共通する低身長や発育不全,および種々の内分泌異常の原因をなすと考えられる。 3.MELASおよびMERRFにおけるミトコンドリア心筋症 各々2例の剖検心の検索の結果,心筋細胞の著明なミトコンドリア異常,筋原線維の減少,心筋組胞の変性が存在し,このため心臓は求心性肥大を来たすことを明らかにし得た。 4.MELASおよびMERRFの外眼筋のミトコンドリア異常 MELASおよびMERRFでは,骨格筋や心筋,および血管平滑筋とならんで外眼筋にも著明なミトコンドリア異常の存在を明らかにした。
|