研究概要 |
アルツハイマー型痴呆(DAT)の分子生物学的研究により、老人斑の主要構成成分であるアミロイドβ蛋白前駆体は第21番染色体にcodeされていることが分かり、ダウン症候群(DS)との類似性が注目されている。 Superoxide dismutase(SOD)は、フリーラジカルの処理機構に関与し、近年老化との関連からも注目されている。一昨年、昨年の検討より、SODはDAT患者では赤血球、血清、髄液中の異常はないが、皮膚線維芽細胞中で異常があることが分かった。そこで、本年は皮膚線維芽細胞におけるSOD異常の機序を検討することを目的とした。 【対象と方法】65才未満で発症したアルツハイマー病(AD)7例、65才以上で発症したアルツハイマー型老年痴呆(SDAT)12例、脳血管性痴呆(MID)9例、年齢を一致させた若年対照群7例と高齢対照群12暢を対象とした。SODmRNAの測定は、皮膚線維芽細胞より抽出したRNAを用いて、ヒトcDNAをプローブとしてNorthern blot analysisを施行した。内部標準として、βactinを用いた。 【結果及び考察】SODmRNAの発現は、AD群で統計学的に有意に増加し(p〈0.05)、SDATで統計学的に有意に減少していた(p<0.05)。これは、SOD蛋白量の測定結果とよく一致し、DATでの皮膚線維芽細胞中SODの異常はmRNAレベルで起っていることが示された。 【今後の予定】今回の3年間の検討を通して、DAT患者皮膚線維芽細胞においてSOD異常があることが分かった。しかし、SODはフリーラジカル除去機構の一部であり、今後catalase,glutathion peroxidaseなども同時に合せ検討していく必要があると思われる。
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