研究概要 |
今年度はコントラスト感度検査および誘発電位を用いてヒトの眼・視覚系の情報処理を研究した。 (1)視覚のコントラスト感度検査(contrast sensitivity function,CSF)の正常値と臨床的意義:健常人のサイン波縦縞に対するCSFを測定したところ、空間周波数が4ー6c/degのパタ-ンに対して最もコントラスト感度が高いバンドパス型の曲線を得た。視神経疾患においてはCSFの異常を認め、これらの症例の大半に視覚誘発電位の異常を認めた。このことから、心理物理学的検査と電気生理学的検査には強い相関があるものと結論された。今後、黄斑変性症や後頭葉病変を持つ患者におけるCSFの有用性を検討する。 (2)網膜電図(ERG)と視覚誘発電位(VEP)を用いた視覚系の情報処理:a)健常人において閃光刺激とパタ-ン刺激に対するERGとVEPの生理学的特徴を検討した。異なった視覚刺激に対する反応は生理学的に異なる特徴を有する所見を得た。この違いは閃光刺激はluminance channelをパタ-ン刺激はcontrast channelを特異的に刺激するためと考えられた。b)健常人においてERG,VEPに対する時間周波数の影響を検討した。ERGとVEPはそれぞれ異なった反応特性を示したので、視神経と視覚野では時間周波数に対して異なった情報処理を行なっているものと考えられた。c)健常人において視覚系が刺激パタ-ンをどの様に分析しているかを検討した。VEPには基本空間周波数に対する反応選択性があり、パタ-ンの基本空間周波数を主に分析していると思われる所見を得た。d)VEPにおける視覚刺激のパラメ-タ-の重要性についても種々の知見を得た。 なお、randomーdotstereogramによる両眼視機能および視覚弁別課題による事象関連電位に関しては、本年度は予備実験しか行なえなかったので次年度以降詳細に検討する予定である。
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