研究概要 |
平成2年度に準備してMPTP(1‐methy1‐4‐pheny1-1,2,3.6‐tetrahydropyridine)を投与した小型の猿(コモン・マーモセット、体重280‐350g)のうち4頭について長期間の行動を観察し、その生化学所見と病理学的所見を検討した。運動量はMPTP投与前に比べて減少したが、著明なakinesiaは消失しchecking behaviourは正常となった。MPTP投与後約2年経過して、3頭の動物では餌を取るときなどに前肢の動作時の微細な振戦がみられるようになった。MPTP投与2年8ヶ月後に尾状核、被核、側坐核、前頭葉大脳皮質などの脳内アミンを測定した。脳内アミンの測定にはHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いた。なお動物の観察には観察者の存在により動物の行動が変化するためビデオ装置による記録お行いその観察を行った。また行動量は赤外線装置による運動量記録装置を用いて24時間の運動量を記録した。運動量はMPTP投与後一時的に著明に減少するが、投与3カ月後には回復した。しかし投与前に比較すると低下していた。その後の運動量は個体差はあるものの有意な変化はみられなかった。脳内アミンの量は長期飼育群でも脳内dopamine,DOPAC,HVAは低下していたが、短期飼育群との間に著明な変化はみられなかった。病理学的検索がはMPTP投与により黒質の細胞数は減少していたが、脳幹部の切片部位により細胞数に差がみられるため、短期飼育群と長期飼育群の間では有意の差はみられなかった。このことは長期の観察時に出現する微細な振戦はドパミン細胞の低下のみでなく、加齢や他の神経系の関与を推測させる。
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