研究概要 |
脳死判定の際にも注目されている如く,脳幹部は生命維持に対し最も重要な役割を担っている事実に関して疑いの余地はない。なかでも脳幹部自律神経系の果す役割が中心であると述べても過言でない。 我々は現在,中枢性ノルアドレナ-ジック センタ-であることが実証されている青斑核の脳循環代謝,脳血管反応性ならびに自律神経反射に対する機能的意義を明らかにすると共に,青斑核を密接な線維連絡を有する孤束核,縫線核についても検討した。 実験にはネコ・サルを用い自律神経反射の検討にはケタミンによる軽麻酔下に上腕動脈にカテ-テルを挿入し,血圧・脈拍・呼吸および呼気炭酸ガス分圧の連続記録のもとにHemodynamic Functional Test(Aschner試験・Valsalva試験・寒冷昇圧試験・体位変換試験)を実施した。一方,脳循環代謝・脳血管反応性の検討にはαークロラロ-ス・ウレタン麻酔を加え,パンクロニウムにて非動化した。電磁流量計を直接内頚動脈,外頚動脈,椎骨動脈および大腿動脈に装着し各血流の指標とした。脳酸素代謝測定のため上矢状静脈洞にカテ-テルを挿入した。脳幹諸核の刺激・破壊は頭蓋骨に小孔を開けStercotaxicに電極を挿入し,刺激実験の後電気凝固法にて破壊巣(いずれも右側)を作成した。破壊一週間後の慢性モデル実験も施行し,sham手術群との間に比較検討した。破壊巣の確認には実験終了後,脳を摘出しホルマリン固定後,肉眼的および組織学的に行った。 青斑核・孤束核・縫線核は破壊後,血圧を介する交感神経系優位な障害を認めた。脳循環は青斑核を除き一側破壊は有位な変化を示さなかった。脳血管反応性は脳循環自動調節に比し脳循環化学調節の障害が著明であった。内頚動脈系に比較し椎骨脳底動脈系に対し,脳循環化学調節の障害は強く,しかも孤束核の関与が最も大であった。
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