研究概要 |
平成2,3年度に引き続き脳血管障害や精神病治療剤のラットのベータ-エンドルヒン分泌に及ぼす影響について観察した。精神病治療剤のクロチアピンは下垂体前葉に作用してベータ-エンドルヒンを分泌促進して血中のベータ-エンドルヒンレベルを上昇させることを認め、この薬剤の作用機序の一つとしてベータ-エンドルヒン分泌促進作用を介するものが考えられた。平成2,3年度にメエクロフェノキサレートやビエメランなどの脳血管障害治療剤がベータ-エンドルヒンの分泌を抑制することを明きらかにしたが、この成績は中枢神経系に作用する薬剤の作用として、従来知られていなかったベータ-エンドルヒンを介する系が一部の薬剤にあることを示している。脳血管障害発作後の血中ベータ-エンドルヒン濃度の変動を観察したところ、発作後2日目をピークとする上昇が見られたれ、その変動は病変の部位や大きさ、合併症の有無、種類により異なることが認められた。この結果はべ一タ-エンドルヒンの変動は脳血管障害とゆうストレスに対する生体の反応の一つであることを示している。神経性食欲不振症患者尿より見出されたペブチッドで食欲を抑制する物質のTRH,TSH分泌に及ぼす影響をラットで検討したところ、このペプチッドはTRH,TSH分泌を抑制することを認めた。また、神経ペプチッドの測定法としてのラジオイムノアッセイ法をエンドセリン1、pre-pro-TRH(178-199)、TRH-glycineについて確立し、その有用性を明らかにすると共にこれらのペプチッドが生体内に広く分布することを認めた。免疫酵素抗体法でエンドセリン111の分布を観察したところ、このペブチッドが神経組織を始め、下垂体、睾丸、心臓、肺、血管内皮細胞、消化管に存在することを認めた。運動失調モデル動物の一つである薄束ジストロフィーマウスで神経ペプチッドと病理変化との関係を観察したところ、病変部位でTRH,ソマトスタチンやP物質の濃度に変動が見られることを認めた。この成績はペプチッドの変化がこのモデル動物の病態に関与していることを示している。
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