研究概要 |
1.チトクロ-ムC酸化酵素欠損の培養細胞による再現性 組織特異性を示さず,全ての組織(血管,筋,線維芽細胞)で酵素欠損を示したLeigh脳症,筋組織で部分欠損,血管平滑筋細胞に活性を示したMERRF(myoclonus epilepsy associated with raggdーred fibers)からの生検筋を培養系に移し,その再現性をみた。Leigh脳症では培養筋管細胞は全て酵素欠損を示した。一方MERRFでは全てのミトコンドリアが酵素活性を持つ細胞と,逆に全てのミトコンドリアが陰性を示す二種類の細胞が得られた。このことは正常mt DNAを多く含む細胞では全てのミトコンドリアが酵素活性をもち,逆に変異mt DNAを多く含むと全てのミトコンドリアは陰性となる,すなわち全か無か(all or none)反応を示すことが明らかにされた(Nonaka et al.Acta Neuropathol 1991). 2.慢性外眼筋麻痺(CPEO)におけるチトクロ-ムC酸化酵素欠損 CPEO(chronic progressive external ophthalmoplegia)では,酵素欠損線維が散在し,いわゆる部分欠損の像を示す。この部分欠損は筋線維の全長に広がるのではなく,節状(segmental)であることを筋線維ときほぐし標本で明らかにした。この欠損部位とCPEOの変異ミトコンドリア(mt DNAの欠失)の量は相関した。このことより,ミトコンドリア病は組織特異性というより細胞特異性を示すこと,酵素欠損と変異mtDNAの量は相関することが分った。(Matsuoka et al Muscle Nerve 1992). 3.MELAS(mitochondrial myopathy,encephalopathy,lactic acidosis and strokeーlike episodes)における新しい変異の発見 MELASではその約80%にmtDNA3843部位でのA→G変異がある。残り20%について分析し,その半数10%に新しく3271にT→C変異があることを見わした(Goto et al.Biophys Biochim Acta 1991).
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