研究概要 |
発生過程の解析が不可能なヒトのかわりにジストロフィン遺伝子が欠損しているmdxマウスを用い,発生工学的手法により筋ジストロフィの確立にむけ以下の研究を行った。 1)個体再構成能(キメラ形成能)の高い未分化幹細胞株の樹立 マウス胚の遺伝子操作の担体となるキメラ形成能の高い未分化幹細胞の樹立・維持・操作技術を確立し,精巣性奇形腫幹細胞及びmdxマウス由来胚幹細胞を樹立することに成功した。 2)ジ-ンタ-ゲティング(gene targeting)法の確立 ジ-ンタ-ゲティング法を確立し,目的とする遺伝子が欠損したマウス個体を作成することに成功し,将来遺伝子操作により新たな筋ジステロフィ-モデルマウスを人為的に作成するための基盤が確立した。 3)キメラ解析のためのマウス細胞標識法の開発 キメラマウスの詳細な解析に必須であるマウス細胞の人為的標識法について検討し,ヒトペプチド進展因子プロモ-タ-に連結したクロラムフェニコ-ルアセチルトランフェラ-ゼ遺伝子がキメラ解析のための遺伝的マ-カ-として有用であることを本遺伝子を含むトランスジェニックマウスの作成により明らかにした。 以上の研究によりmdXマウスを用いた発生工学的手法により筋ジストロフィ-を解明するための基礎的実験系が確立したと考えられるが,当初予定していた本実験系を用いたDMD保因者のモデルマウスの作成及び解析については今後の研究課題として残された。今回得られた知見をもとに筋ジストロフィ-解明に今後さらに取り組む予定である。
|