研究概要 |
細胞膜に存在する酵素Na^+,K^+ーATPaseの生理的調節因子としての内因性ジギタリス様物質が高血圧,心不全などの循環器疾患との関連で注目され,10年以上にわたりその化学構造が追求されてきた。 我々は1989年に哺乳類血漿およびヒト尿から逆相C18高速液体クロマトグラフィ-で約18%アセトニトリルで流出される高様性のジギタリス様物質の存在を世界に先駆けて明らかにし,ヒト尿からその単維に成功した。この物質は動物体内に広範囲に存在し,既に副腎と下垂体に高濃度(血漿に比し100倍以上)に存在することをラットにおいて確認した。また副腎培養細胞ならびに腎尿細管・血管平滑筋細胞などにおいても,同一のジギタリス様物質が存在し,少量ではあるが培養液中に遊離されることを見い出した。この物質の産生が細胞膜を介するNa輸送を関連している事実も示唆され,ジギタリス相物質は,最初の説で言われる循環血中のホルモンとしてではなく,パラクリン・オ-トクリン様の因子として生体内でNaポンプは性の調節に関与している可能性が大きいと考えられた。 ヒト尿中にはより極性の低い上記の逆相C18カラムから約31%のアセトニトリルで溶出される,異なるジギタリス様物質が存在しているが,この物質の単維にも成功した。しかしこの物質は物理化学的にジゴキンンと区別できないことが判明し,ヒト体内で合成されたものかどうかは不明である。同様の観察がヒト血染間福の高様性ジギタリス様物質についても報告され(すなわちウアバインそのものであるとHaulyn;により明らかにされた),従来予想できなかった強心配低体の動物体内での合成経路の解明が今後の課題である。その他,ジギタリス様物質がウン内皮細胞からエンドセリンを遊離させること,本態性高血圧患者血染中ジギタリス様物質のレベルが高値であることなどを明らかにした。
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