研究概要 |
1.尿細管での産生:腎由来の株化細胞であるMDCK(イヌ皮質集合管由来)を用い、特異的cDNAによるノ-ザンブロット法でプレプロエンドセリンmRNA(約2.3kb)の存在を認めた。成長因子であるTGFβによりmRNAは時間依存性、容量依存性に増加したが、プロテインキナ-ゼCを活性化するTPAにより急速・一過性の増加をみた。培地中に分泌されるエンドセリンをモノクロ-ン抗体を用いた酵素免疫法で測定した結果はmRNAの動きと数時間の遅れで平行していた。さらにアクチノマイシンD添加によるmRNAの半減期はTGFβによって遅延していた。これらよりTGFβによるエンドセリンmRNAの増加は転写レベルだけでなくmRNAの分解遅延により調節されている可能性が示された。またエンドセリン分泌はconstitiutive secretionでありmRNA量が実際の分泌量を決定していることも証明した。 2.エンドセリンの分泌極性の細胞生物学的機序:フィルタ-上に発育させたMDCKの単層上皮細胞を用いて、尖端側と基底側に分泌されるエンドセリン、ビックエンドセリン量を比較した。いずれも定常状態で約2〜3倍基底側への分泌量が多かったが、TGFβの添加により約7倍と増強した。この分泌極性の機序を明らかにするため、1)ウアバイン、アミロライドで抑制した場合、2)ライソゾ-ムの機能をクロロキン、塩化アンモニウムで障害した場合、3)コルヒチン、ビンブラスチンなどで細胞内微小管の作用を抑制した場合などで、尖端側と基底側への分泌量の変化を検討した。エンドセリンの分泌極性はいずれの群でも影響をうけなかったが,ビッグエンドセリンはライソゾ-ムの機能障害により尖端側への分泌が増加した。さらにこの場合は,ビックエンドセリンからエンドセリンへの変換率が80%から60%に低下した。以上よりエンドセリンのペプチドプロセッシングと分泌機構にライソゾ-ムが関与していることが示唆された。
|