1.近年、動脈硬化発生における役割が注目されているインタ-フェロン(以下、IFNと略)の血管平滑筋の増殖にたいする影響を調べた。その結果、IFNは条件により平滑筋の増殖を抑制することも促進することもある両方向性の増殖の制御因子であることを明らかにした。 血管平滑筋を牛胎児血清存在下で培養し、平滑筋が盛んに増殖している状態でIFNを作用させると、平滑筋の増殖は抑制された。しかし1%plasmaーderived serum存在下で5日間培養し平滑筋の増殖がほぼ停止した系においてはIFNは平滑筋の増殖を逆に促進した。増殖促進効果発現までに時間的遅れが存在すること、IFNで処理した平滑筋の培養上清中に増殖因子活性が検出されることより、IFNの増殖促進はautocrine増殖因子の産生を介する間接的なものと考えられた。また増殖を促進する条件下では、IFNはPDGFタイプBレセプタ-を増加させた。 われわれの研究により、IFNは、Hasson等により主張されているように動脈硬化を抑制するばかりでなく、平滑筋を増殖させ動脈硬化を促進する可能性もあると考えられる。IFNの増殖促進作用は、動脈硬化発生のみならず、慢性関節リウマチなど慢性炎症における線維化の成因を理解するうえにおいても重要な現象である。 2.ヒト頸動脈内膜剥離手術標本を用いて、免疫組織化学によりIFNの存在を検索したが、弱陽性を思わせる所見は得られるものの、存在を証明したとするほど確かな所見は得られなかった。ヒト動脈硬化病巣におけるIFNの量は存在してもごくわずかと考えられ、PCRによるIFN mRNAの検出など、検出感度の高い方法を用いる必要があると思われた。
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