1.活性化血小板による血管内皮細胞傷害と細胞内情報伝達物質:[ ^3H]adenineでラベルした培養内皮細胞にコラ-ゲンで活性化した血小板あるいは血小板破砕液を添加すると、細胞内ATP、cyclic AMP(cAMP)の減少、AMPの増加、細胞外へ漏出する総放射活性の増加、特にadenosineの増加が観察された。この変化は細胞傷害に基づく細胞代謝の亢進を示すものと考えられる。同様に、[ ^3H]guanosineでラベルした細胞に活性化血小板を作用させると細胞外の総放射活性の増加が認められており、グアニンヌクレオチド代謝への影響が考えられた。その詳細な解析を今後予定している。一方、Berridge法によるイノシト-ル燐脂質代謝回転、Furaー2法による細胞内カルシウムについても現在基礎実験を重ねているが、活性化血小板により、内皮細胞内のイノシト-ル燐酸が増加し、カルシウムの動員が起こると考えている。なお、本テ-マに関連し、冠動脈の病態生理における血小板活性化の重要性が指摘されていることから、冠動脈平滑筋細胞についても、同様な検討を行い発表した。 2.活性化血小板による細胞傷害の予防:本モデルによる観察から、血小板による内皮細胞傷害がPGI_2、cAMP phosphodiesterase(PDE)阻害剤、dibutyryl cAMPにより抑制されることを認め、cAMPによる何らかの防御的な効果が示唆された。以上の結果を総合して考えると、血小板による内皮細胞傷害とその予防の機序として、細胞内Ca^<2+>の上昇とcAMPによるその抑制が考えられた。一方、cGMPを増加させるANPや8ーbromoーcGMPは傷害に対する予防効果が弱かった。内皮細胞のGーキナ-ゼ活性は極めて低値といわれており、カルシウムのsequestration作用が平滑筋等に比し弱い可能性がある。しかし、私共は内皮細胞ではcGMPの増加に伴うcGMPーstimulated PDEの活性化によりcAMPが減少することを見出しており、その影響も考えられ、情報伝達物質相互の関連が注目された。
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