内皮細胞のグリコサミノグリカン(GAG)は、血管内腔側表面のみならず、基底膜側にも存在することが知られている。しかし、基底膜側GAGの血液凝固調節における生理的意義は不明である。内皮細胞が産生した基底膜における抗凝固性ヘパリン様物質の局在を、無処理の培養内皮細胞と比較して検討し、またその抽出を試みた。豚大動脈培養内皮細胞細胞外基質(ECM)標本と無処置の内皮細胞について、 ^<125>I標識アンチトロンビンIII(ATIII)結合と ^<35>Sーグリコサミノグリカンを比較した。ECMの最大結合能は内皮細胞の61%であった。いずれの結合も、ヘパラン硫酸の除去により消失したが、コンドロイチン硫酸(±デルマタン硫酸)の除去では変化がなかった。ECM中のヘパラン硫酸は、内皮細胞が産生するヘパラン硫酸の58%に相当し、ヘパリン様ATIIIコファクタ-活性を認めた。即ち内皮細胞の基底膜側にも、抗凝固性ヘパラン硫酸が局在し、内皮のヘパリン様抗凝固活性による凝固調節は、内皮下でも行なわれている可能性が示唆された。一方で、ECM標本からヘパラン硫酸プロテオグリカンの精製実験を試みた。大量の豚大動脈内皮細のECMを、培養皿上に調製した。 ^<35>Sー硫酸あるいは ^3Hーセリンでプロテオグリカンを標識し、ECM標本からヘパラン硫酸プロテオグリカンの精製実験を試みた。高濃度のグアニジン在存下でECMを可溶化し、ゲル濾過によりバッファ-交換した後、DEAEクロマトグラフィ-にかけた。プロテオヘパラン硫酸がコンドロイチン硫酸よりも先に溶出され、この部分を蒸留水に対して透析後凍結乾燥した。SDSーPAGEでこの標本を分析すると、還元処理によっても変化しない、一見単一の巨大プロテオグリカン分子のバンドが得られた。ヘパリチネ-スによって、ヘパラン硫酸を分解した後は、より小分子の、しかし200KD以上のコア蛋白が分離できた。さらにアンチトロンビンIII親和性カラムで、精製を進めると同時に、特異抗体でコア蛋白の同定を行う予定である。
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