1.琢冠動脈中膜条片を急速固定し、二次元電気泳動法によりミオシン軽鎖燐酸化を測定し、エンドセリン(ET)の効果を調べた。ETー1投与時、(1)細胞外Caの有無に関わらず、細胞質カルシウムイオン濃度[Ca]iが上昇する場合は、早期(30秒)から燐酸化ミオシン軽鎖も増加すること、(2)細胞外Caが存在する場合、張力や[Ca]iは増加したまま維持されるが、燐酸化ミオシン軽鎖は次第に減少すること、(3)[Ca]iの上昇を伴わない収縮では、燐酸化ミオシン軽鎖は増加しないこと等が明らかとなった。ETー1による[Ca]iは上昇は、カルモジュリンを介するミオシン軽鎖燐酸化を引き起こすが、それは、発生張力の初期相のみを制御していると考えられ、持続相の張力維持には、別の制御機構が関与している可能性が示唆された。この持続相の張力維持機構は、[Ca]iの持続的上昇に依存するものであり、収縮蛋白質のCa感受性の増大とは異なるものである。[Ca]i増加を伴わない一過性の収縮には、Caーミオシン燐酸化系を介さない別の機構が関与していると考えられた。 2.フラ-2を取り込ませた琢大動脈弁弁劣の表面蛍光連続測光法を用いて、内皮細胞の[Ca]iを測定した。ETー1およびETー3は、[Ca]iの上昇を引き起こし、細胞Caの存在下では二相性の変化を示した。最初の相は、ピ-クを伴う鋭い[Ca]iの上昇であり、細胞外Caを除いた条件でも観察され、細胞内Ca貯蔵部からのCa放出によるものであり、第二相は、細胞外Caに依存性の[Ca]iの持続的上昇からなっており、細胞膜のCaチャンネルを介するCa流入によるものと考えられた。さらに、ETー1が、ETー3の場合よりも大きな[Ca]iの上昇を引き起こすことを初めて証明した。従って、ETの生理的役割として、血管平滑筋の収縮を直接引き起こす作用(パラクライン)のみならず、内皮細胞の分泌機能を制御するオ-トクライン情報伝達物質としての役割も考えられた。
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