〈目的〉急性虚血下の心室では心筋内カリウムイオンが流出して間質内に畜積し心室の電気的不安定性が増大する。本年度の研究は前年度の計画を継続して実施した。すなわち、慢性低カリウム犬の冠動脈閉塞および再潅流を行い心筋間質カリウムイオン動態、心室性不整脈の出現状況心室電気生理特性の変化を検討し、これらが冠動脈閉塞後再潅流までの時間の相違によってどのように影響を受けるかを検討した。〈方法〉前年度と同じmetabolic balance studyで作成した慢性低カリウム犬と正カリウム犬の右室自由壁、左室前壁(虚血部)、左室後壁(健常部)各々3カ所の心内膜側にプランジ双極電極を装着し、左室前壁(虚血部)と左室後壁(健常部)には別に4連型カリウム電極を各々1カ所に装着した。冠動脈前下行枝閉塞から再潅流までの時間を30分、60分、90分、120分の4群に分け、心室期外刺激法を行った。〈結果〉冠動脈閉塞による虚血部で両モデルともに間質カリウムイオンの増加を認め、この増加の程度は両モデルで明らかな差を認めなかった。再潅流後の間質カリウムイオンは急速に前値近くに復した。心室性不整脈の出現、誘発は冠動脈閉塞中、再潅流後ともに正カリウム犬におけるよりも低カリウム犬における方が高率に認められた。冠動脈閉塞による虚血部の有効不応期および伝導時間は両モデルともに延長を認めたが、これは低カリウム犬で顕著であった。〈結論〉本研究ではmetabolic balance studyで作成した慢性低カリウム犬で冠動脈を閉塞すると虚血部心筋の間質カリウムイオンは正カリウム犬におけると同程度に高度に上昇し、再潅流で急速に低下した。冠動脈閉塞と再潅流に伴う心室性不整脈出現誘発増加および心室電気生理的特性の変動と慢性低カリウム犬における虚血部心筋の間質カリウムイオンの変動とは密接な関係があると考えられた。
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