研究概要 |
我々の研究課題は、高血圧自然発症ラット(SHR)およびBIO14.6心筋症ハムスタ-を用い、Naポンプ遺伝子の発現・制御の異常が心肥大の形成に関与するかを明らかにすることである。平成2年度の研究の進展状況については、当初の研究計画をほぼ達成でき、新たに以下の知見が得られた。 1.心肥大発症前の4週齢の高血圧自然発症ラット(SHR)の心臓および血管においては、正常血圧ラット(WKY)に比し、Naポンプ遺伝(α1,α2,α3およびβサブユニット)の著名な発現亢進を認めた。一方、腎臓においてはSHRおよびWKY両者間で、Naポンプ遺伝子発現量に差を認めなかった。よって、心血管系におけるNaポンプ遺伝子の発現制御の異常がSHRの心肥大形成および高血圧発症に関与する可能性が示された。 2.SHRおよびWKYのDNAを各種制限酵素で切断し、Southern blot法によりNaポンプ遺伝子を解析したところ、SHRにおいてNaポンプ遺伝子α1鎖の制限酵素断片長多型(RFLP)が存在することが判明した。すなわち、Naポンプ遺伝子の塩基配列の異常が、上述したSHR心筋および血管におけるNaポンプ遺伝子の発現亢進の原因である可能性が示唆された。
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