研究概要 |
平成4年度は、in vitroの系において、Na^+による心筋細胞のNa,K-ATPase遺伝子の発現制御機構について解析し、さらに高血圧自然発症ラット(SHR)および心筋症ハムスター(Bio14.6)を用いたin vitroの系で、心肥大、心不全に伴うNa,K-ATPase遺伝子の発現異常について検討した。 1.Na^+により、心筋細胞のNa,K-ATPase遺伝子の発現が転写レベルで亢進することを明らかにした。また、reporter gene assay法により、5'上流のプロモーター領域にNa^+が特異的に作用する塩基配列が存在する可能性を明らかにした(J Clin Invest、印刷中)。 2.心肥大、心不全発症前の3週齢のBio14.6ハムスターの心筋においては、正常F1bハムスターに比しNa,K-ATPase遺伝子(α1,α2,α3およびβ1鎖)の有意な発現の低下を認めた。心筋症ハムスターにおけるNa,K-ATPase遺伝子の発現低下は、細胞内Na^+の増加、さらに二次的にNa^+/Ca^<2+>交換系を介して細胞内Ca^<2+>の増加をきたし、心肥大、心不全に関与する可能性が示された(論文投稿中)。 3.一方、高血圧、心肥大発症前の4週齢のSHRラットの心筋においては、正常血圧ラット(WKY)に比しNa,K-ATPase遺伝子の発現が有意に亢進しており、これはSHRラットの細胞膜透過性亢進に伴う細胞内Na^+増加による二次的変化と考察された(論文投稿中)。
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