研究概要 |
平成2-4年の3年間、一般研究Cの助成を受け、in vitroの系において、各種ホルモンやイオンによる心筋細胞のNa,K-ATPase遺伝子の発現制御機構について解析し、さらに高血圧自然発症ラット(SHR)および心筋症ハムスター(Bio14.6)を用いたinvitroの系で、心肥大、心不全に伴うNa,K-ATPase遺伝子の発現について検討し、以下の様な研究成果を得た。 1.甲状腺ホルモン、アルドステロンホルモンにより、心筋細胞、血管平滑筋細胞のNa,K-ATPase遺伝子の発現が転写レベルで亢進することを明らかにした。さらに、reporter gene assay法により、5'上流のプロモーター領域にこれらホルモンが特異的に作用する塩基配列が存在することを明らかにした。さらに、Na^+によるNa,K-ATPase遺伝子の発現制御についても検討し、遺伝子の発現を転写レベルで調節していることを明らかにした。 2.心肥大、心不全発症前の3週齢のBio14.6ハムスターの心筋においては、正常F1bハムスターに比しNa,K-ATPase遺伝子(α1,α2,α3およびβ1鎖)の有意な発現の低下を認めた。心筋症ハムスターにおけるNa,K-ATPase遺伝子の発現低下は、細胞内Na^+の増加、さらに二次的にNa^+/Ca^<2+>交換系を介して細胞内Ca^<2+>の増加をきたし、心肥大、心不全に関与する可能性が示された。 3.一方、高血圧、心肥大発症前の4週齢のSHRラットの心筋においては、正常血圧ラット(WKY)に比しNa,K-ATPase遺伝子の発現が有意に亢進しており、これはSHRラットの細胞膜透過性亢進に伴う細胞内Na^+増加による二次的変化と考察された。
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