研究概要 |
(目的)本年度は慢性期心筋梗塞(OMI)患者リハビリテ-ションに対するATレベルの運動処方,およびその効果をATを含めた運動耐容能で判定し,OMIのリハビリテ-ションに対するAT処方の効果,およびAT規定因子について検討した。(方法)MIにて当科入院した患者のうち急性期リハビリテ-ションを終了した40例(平均55.7歳)を対象とした。(1)MI発症後1,3,6か月にトレッドミルによる心肺運動負荷試験を施行し,AT,peak VO_2の経時変化につき検討した。なお慢性期リハビリテ-ションは1か月時点のATレベルの歩行を中心とした運動とした。(2)1ー3か月のAT,peak VO_2の経時変化を1か月時点の呼気ガスデ-タ,安静時心機能として心系数(cardiac index:CI),心室瘤の有無,急性期のCK max値などから検討した。(3)対象者のうち12例につきMI発症1,3か月にCO_2再呼吸法による安静時,およびATの80%レベルの運動時心拍出量の測定を行い,ATと心拍出量の関連につき検討した。(結果)(1)ATとpeak VO_2の経時的推移:1,3,6か月におけるATの平均はそれぞれ14.3,15.9,16.5ml/min/kg,peak VO_2は20.4,23.9,24.6ml/min/kgでいずれも1〜3か月で有意な増加を示した。1,3,6か月のATとpeak VO_2はいずれも正相関を示した。(2)ATの経時的推移に関与する因子:1か月のAT値は年齢と逆相関傾向を示した。安静時心機能のうちΔATに関与する因子としては1か月時点のAT値,心室瘤の有無などが挙げられた。(3)ATとCIの関係:1,3か月におけるCIはそれぞれ2.01±0.36,2.35±0.51l/min/m^2で増加傾向を示し,ΔATとΔCIの間には正相関傾向が認められた。 (総括)MI患者のATレベルのリハビリテ-ションでAT改善は1〜3か月にみられたが,それ以降にはみられなかった。1か月時点の低ATの改善にATレベルのリハビリテ-ションは有効と考えられた。ATの増加には末梢効果の関与の他中枢効果の関与も推察された。
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