研究概要 |
心筋梗塞に対する晩期再潅流時期が左室形態及び心筋壊死過程に及ぼす影響 【目的】近年、再潅流寮法が広く行なわれ、再潅流時期が問題となっているが、その検討は梗塞サイズを中心に行なわれ、梗塞心筋の形態変化についての検討は充分でない。今回、ラットの覚醒モデルを用い梗塞サイズを変化させない時期に行った晩期再潅流が左室形態、特に梗塞部expansion(EXP)及び心筋壊死過程に及ぼす影響を検討した。【方法】WKYラットを麻酔下に開胸し,左冠動脈に糸をかけ閉胸、覚醒下に冠閉塞、再潅流できるモデルを作製した。術後一週間後に覚醒下で冠動脈を閉塞、6時間晩期再潅流群(LRP群)を作製、再潅流をしない群(0群)と比較検討した。梗塞一週間後に血行動態計測し、屠殺、心臓を固定後、横断面にて6等分し、各スライスで、HE染色施行した。再流はmicrosphereで確認した。心筋梗塞量は各スライス面で左室全面積と梗塞面積を計測、合計しその比(%MI/LV)で表示した。EXPの判定のため、dilationの指標として非梗塞心室中隔外周径に対する梗塞左室自由壁外周径の比(FW/IVS)を、thinningの指標として梗塞中心部壁厚(Wth)を用いた。また梗塞心筋治癒過程に対する検討として線維化されていない残存壊死心筋量(N)を計測し梗塞量に対する比(%N/MI)を求めた。 【結果】梗塞1週間後にて左室圧、LVEDP、左室dp/dtは3群間で有意な差はなかった。左室形態の変化を以下に示した。 %MI FW/IVS WTh(mm) %N/MI PO群 42±2 2.8±0.2 0.31±0.02 11.3±2.0 LRP群 38±2 3.1±0.4 0.29±0.03 4.2±1.4* (mean±SE,p<0.05vsPO群) 【結語】梗塞後6時間の晩期再潅流では非再潅流心筋梗塞に比して、梗塞サイズ、EXPには影響しないが、残存壊死心筋量を減少させ治癒機転、線維化を促進させる事が当研究より判明した。
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