平成4年度は以下の検討を行なった。実験モデルはすべての既報のあらかじめ手術にて左主幹動脈周囲に掛けた糸を体外から牽引することにより覚醒下に任意の時間にて冠動脈閉塞並びに再灌流をなし得るラットモデルを用いた。 1。高血圧に伴った心筋肥大のexpansionに及ぼす影響--前年度から引き継いで検討を行ない、SHRではWKYに比べ高血圧の存在にもかかわらず、梗塞後のexpansionの程度が抑制されること、特に梗塞部心筋の正常心筋に対するthicknessがwkyに比べて保たれていることを観察した。 2。再灌流の梗塞部心筋における炎症細胞浸潤に及ぼす影響:冠動脈閉塞後1時間並びに6時間にて再灌流を行ない、再灌流後16時間、並びに3日後に心を摘出し、炎症細胞浸潤の程度を閉塞持続非再灌流群と比較した。16時間後においては好中球の浸潤が著明であったが、その程度は両再灌流にて増加していた。また3日後ではmonocyte/macrophageの浸潤が有意であったが、その浸潤の程度も両再灌流群で非再灌流群より著明であった。 3。心筋梗塞後のexpansion並びに心不全形成に対するアンジオテンシンII受容体拮抗薬の影響:あらかじめアンジオテンシンII受容体(AT1)拮抗薬(TCV-116)を投与しておいたラットでは対象群に比べ、冠動脈結紮後の死亡率の低下が認められ、冠閉塞10日後における血行動態においては、左室拡張末期圧の低下、心拍出量の増加が見られた。また、expansionに指標としてのFW/IVSは保たれ、またthinningの指標であるWThも対象群より厚かった。
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