心筋細胞の収縮は、細胞膜の脱分極によってトリガ-される細胞外からのCa^<2+>流入と筋小胞体膜からのCa^<2+>放出による急速な細胞内Ca^<2+>濃度上昇によって引きおこされる。ほ乳動物では、心筋収縮に関与するCa^<2+>の大半は筋小胞体からのCa^<2+>放出に由来するものと考えられ、このル-トのCa^<2+>供給の制御は心筋収縮力の調節に大きな役割を果たし得るものと思われる。そこで、平成2年度に於て以下の研究を行った。 1)ウサギ心筋小胞体Ca放出チャンネルのcDNAクロ-ニングを完了し、このcDNAから作成したmRNAをアフリカツメガエルの卵母細胞に注入して蛋白質を発現させ、この蛋白質がCa放出チャンネルであることをカフェイン刺激によるCa^<2+>依存性Cl^ー電流を誘発することにより確認した。ウサギ心筋Ca放出チャンネルは4968個のアミノ酸からなり、この一次構造に基づいて膜貫通部位、分子内機能部位についての推定を行い、さらに、骨格筋小胞体Ca放出チャンネルとの構造比較を行った。 2)各種のプロテインキナ-ゼ(A、G、及びCa^<2+>、カルモデュリンキナ-ゼII)を用いて心筋小胞体Ca放出チャンネルのりん酸化とCaチャンネル活性化のマ-カ-としての〔 ^3H〕ryanodine結合活性の変化について調べた。その結果A、G及びCキナ-ゼによるりん酸化は同一のペプチド断片上のセリン残基でおこり、〔 ^3H〕ryanodine結合活性を上昇させること、他方、Ca、カルモデュリンキナ-ゼIIは別のペプタイド断片上のセリン残基をりん酸化することにより〔 ^3H〕ryanodine結合活性を減少させることが明らかになった。
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